Friday, December 17, 2010

カルロス・ゴーンとマネジメントを語る


「カルロス・ゴーンとマネジメントを語ろう」という会に参加してきた。
初めて間近で見る、日産の最高経営責任者、カルロス・ゴーン。

いや、実際には、数年前、私が働いていたレストランによく来ていたので
何度も見ていた。
ただし、レストランに来ていたときは完全に「父親」だったので
「ビジネスマン」、「経営者」としての氏を拝見したのは初めてだった。

そんな少しノスタルジックな思いと、ワクワクする気持ちを抱えながら講演を聞いた。

とにかく、徹底してシンプル。
無駄な言葉はなく、一つ一つの単語が脳内に粘着する。その粘着力がスゴイ(なんのこっちゃ)。
講演も手短に、これはモノローグではなく、ダイアローグだと言う。

オーディエンスからの質問。

その中には、
日本が世界に誇る企業ブランドを今後どのように維持していくのか、
といった質問や、
就任から今までの苦難や挑戦をどのように乗り越えて来たのかなどがあった。


もちろん、何千回とそのような質問には答えてきているのだろう、
ゴーン氏は一つ一つ丁寧に、且つ冗長になることなく答えていた。



個人的にもっとも印象的だったのは、家族との時間と仕事の両立に関しての回答。

「一つ悪い知らせがある。それは、(家庭と仕事との両立は)とても難しい、ということ。
そして一つ良い知らせがある。それは、(両立が)とても難しいが故に、
あなたをビジネスマンとして、父親として、より良くしてくれるということだ。

この二つの両立はとても難しい。但し、それは不可能ではない。
そして、その難しさ故に、また、それは不可能ではないが故に、
あなたはよりプロフェッショナルになり、より家庭的になることが出来る」

この発言を聞いて、「経営者を知るためには、その奥さんや家庭を見るといい」
と誰かが言っていたのを思い出した。
そう、本物のプロフェッショナルは、家庭的なのだ。

最も、彼の言葉には結果を出してきたからこその説得力がある。
だからこそ、シンプルな言葉に重みが生まれる。

「若い頃、アメリカでよくプレゼンをしたが、オーディエンスの中には
眠っている人もいた。知り合いに聞いても、『良かったよ』というばかりで
何が悪いのか全くわからなかった。しかし辛抱強く聞いてみると、
『君のプレゼンは良かったよ。でも…』
この『でも』が聞けるようになってくる。

『文章が長すぎて難しかった』だとか
『面白くなかった』だとか
『単調だった』だとか。

ひとつひとつを改善するのは用意ではない。
ただし、時間をかけてじっくりと取り組めばかならず効果がでる。」

「超」一流と呼ばれ、結果を出しているビジネスマンですら
そのような時期があったのかと思うと、自分がいかにレベルの低い、
志のない、小さな視点で物事を常日頃見ているのか、と
自責の念にすらかられてしまう。

SDMに入ってから研究科長に言われたことを思い出した。
「どんなトピックでもいい。30分なり一時間なり、時間を
与えられたら『話せる』人間になってほしい」

個人的には、日本語でも英語でもできるようにしたい。

僕は、日本に足りないのは「魅せる(見せる)」技術だと思う。
それは日本の文化などに見られる「ワビサビ」のような技術を、
欧米をはじめとする諸外国の求めるテンプレートに載せ込み、
コンテンツを「翻訳」する作業だと思うのだ。

ゴーン氏の講演内容からの最も大事なTake Awayは、

「それはとても難しい。ただし、不可能ではない。
そして、それはとても難しいので、
さらには、不可能ではないので、
それに挑戦することは、あなたをより良くする。」

もちろん、ひとりの力で達成できる事と出来ないことがある。
ひとりが達成できない事をやるのが、「カンパニー」であり、
「カンパニー」は「ビジョン」でマネージできる。
「ビジョン」がなければマネジメントは成り立たない。
「ビジョン」を共有できなければ、「カンパニー」である必要はない。
「ビジョン」を「カンパニー」と共有するために、
十分な説明をし、議論をし、お互いが歩みよって、「ゴール」が設定される。

そんなことを森羅万象の如く考えてしまった金曜の夜だった。