人生は選択の連続。自分がこうしてやっている事は、明らかに自分自身で選択した事であり、自分がやらなかった(やらない)事もまた、選択の結果である。無論、人によって与えられた選択肢はことなる。特に経済的に貧しい環境で育った場合、選択肢は狭められ、不利な条件の元で現実的(リアリスティック)な判断を行う。今までのPostで論じてきたような、「元気があれば何でも出来る」的な楽観的(オプティミスティック)で青臭い(ナイーブ)な理論は通用しない。現実という、恐ろしく高い壁。ベルリンの壁が崩壊したように、現実と夢をブリッジング出来るケースもあるにはある。但し、そういった事は(残念ながら)日常的に頻発しない。「風が吹いていない時に凧は上がらない」というように、自分の力ではどうすることも出来ない障害もあり、それを人は称して「現実」と呼ぶ(そんな気がする)。
人生は一重に、そうした中で選択を行っていく、条件分岐。条件分岐を行う時には、必ず、二方向に結果を分岐させなければならない。二兎を追う事は出来ない仕組みなのだ。分岐させないという手段もあるだろう。一つの処理の中で、2つの(もしくはそれ以上の)処理を同時に行うという方法もある。しかし、今まで1の処理しか行っていなかった部分で、倍の処理を行うということは総じて無理が生じるものであり、全体的に見ればリスクとして捉えられるだろう。リスクを可能性として見る向きもあるが、これはそのリスクが健全かによる。健全なリスクを取る事によって、活性化を計る事もでき、停滞や閉塞といったネガティブな事態を回避できる。しかし、ここでのポイントは、そのリスクが「健全」であるかどうかであろう。
健全なリスクとはいったい何かを考えた時に、やはりそのインパクトを考えるべきであろう。インパクト=影響度と考えると、それは「良い」影響、「悪い」影響に分けて考えることが出来るのではないか。このような事を考える時によく使われるのがSWOT分析であるが、これは意外と難しい。試しに、「働きながら学校に行く」ということを分析してみる。
Strength
-学位を取得できる。
-実務だけでは得る事が出来ない深い知識を得る事が出来る。
-同じ志を持った人間との出会い、学びを共にするという人生の財産。
Weakness
仕事の量が減る(収入が減る)
-学業に十分な時間を割けない。
-学費の捻出など、経済的な部分での支出増加。
-周囲の人からの羨望の視線(周囲の人への迷惑)
Opportunity
-「職」を失う事なく、「学」を得る事が出来る。
-多忙な中で大量のInput/Process/Outputを行うことにより、能力をストレッチさせる事が出来る。
Threat
-職を失う恐れ。
-学位が取得できない恐れ。
-取得した学位が業務に活かされない恐れ。
-疲労などによる身体/精神への疾患。
昨今の経済的不況の影響からか、社会人をしながら学校に通うといったケースが増えてきているようだ。自分もそんな「甘い誘惑」に駆られて、ある学校を受験して合格したので、実際に行くべきかかなり悩んだ。最終的には「行かない」という決断をした訳だが、今こうしてSWOT分析をしてみると、自分が悩んでいたポイントが明確になり、自分の選択を論理的に整理出来た気がした。
上に掲げた分析は、一般的と思われる事項を簡単に纏めたつもりなので、漏れや抜けがあるかもしれない。そして、それぞれの重みは時と場合によって異なる事も忘れてはならない。
従って、このレベルの分析では、実質的には何の意味もなさない。この分析を行ったからといって、明確な答えが出ないからだ。しかし、全ての要素を一度テーブルの上に出し、吟味するといったことは重要である。「後悔先に立たず」というように、起きてしまった事はかえる事は出来ないし、それでは既に遅いのだ。
最終的な判断基準としては、やはり、「弱み」や「恐れ」を払拭出来るかに尽きる。
もし、そうでないならば、そのリスクは「健全」とは言えないし、それは避けるべきものとなる。逆に、この「弱み」と「恐れ」を取り除く事が出来れば、それは健全なリスクと言えるものであり、それはリスクテイキングすべきだと言える。
長々と書いてしまったが、先にも述べたように、このレベルの分析では、実質的な意味を論じる事は難しい。結局はポジティブな面とネガティブな面を天秤にかけて行う訳だから、実際にどれくらいの収益と支出があるのか丁寧にデータや数字で語るべきものである。
以前、何かの本で、「どんな名投資家であっても、投資に成功する確率は7対3だ。その中で、どれだけ7の部分の利益を最大化し、3の部分の損出を少なくするかがプロとしての仕事が問われるところである」と書いてあった。
絶対的な答えは存在しないし、それを追い求めるのは間違っている。「直感」で作業する部分、「データ」で論理的に説得して行く部分、両方を適宜使い分けて、二兎を追う事が無いようにしたいものだ。言うは易し、行うは難し。千里の道も一歩からはじまる。兎と亀の昔話ではないが、一つの事に集中し、ゆっくりと着実に歩んで行った者が最後に勝つのだと信じたい。